皮膚科における男女共同参画の取り組み
皮膚科 医局長
桒野嘉弘
皮膚科は古くから女性医師が広く活躍する職場として知られています。
日本皮膚科学会の総会員数に占める女性医師の割合は43%で、数ある医学会中でトップとなっています(2009年日本皮膚科学会調査)。また、年々、女性医師の割合は増加しており、45歳以下に限ると57%、30歳以下の層に限ると実に70%が女性医師となっています。
女性医師の人生設計において、出産、育児は大変重要で大きなウエイトを占めるイベントです。出産、育児を契機に医師としてのキャリアを継続することが困難になってしまうことも多く、これは皮膚科においても例外ではありません。皮膚科学会の全国調査によれば、大学の医局を辞める女性医師が多いのは入局後5〜10年で、この時までに7割の女性医師が辞めてしまっているという結果が出ています。
そのため、日本皮膚科学会でも女性医師のキャリア継続は重要な課題となっており、2009年には、”皮膚科の女性医師を考える会”が発足しております。アンケート調査、日本皮膚学会総会やその支部総会における討論会の開催などの精力的な活動を展開しています。
当科においても、女性医師の割合は年々増加傾向にあり、平成23年度には新人医師における女性医師の割合が50%を超えました。そのため、男女共同参画の取り組みを通じて、女性医師に活躍していただくことは極めて優先度の高い課題となっています。
当科では、妊娠、出産を経てもキャリアを継続することが可能となるように、日当直や勤務体制など様々な点について取り組んでいます。
まず、夜間の当直は全て免除としています。更に回数も可能な限り減らし、出産後すぐは、日直も含めて免除としています。しばらくして落ち着いた後も土曜日の日直を中心にお願いしています。土曜日の日直という時間帯を選んでいるのは、保育園に子供を預けるなどの対応が取りやすいためです。また、病棟勤務も、お子さんがいらっしゃる女性医師の場合には、夜間の呼び出しなどへの対応が難しく、キャリアの継続が困難となってしまうため、現在、免除となっています。
当直、病棟勤務が免除となり、日中の外来勤務だけとなった場合でも、保育園の状況やご家族のサポート体制などによっては、勤務の継続が困難な場合が少なくありません。その場合は、最近創設された病院診療医の制度を当科ではフル活用しています。御存じの通り、病院診療医は、育児等のために長時間の勤務が困難な医師に対する短時間勤務制度で、柔軟な勤務体制が可能となっています。この制度により、個々の女性医師の状況に応じて、可能な範囲で診療にあたっていただいています。週半日の外来のみという場合も多いのですが、完全な休職になってしまう場合に比較して、診療スキルの維持などに大変役立っており、キャリアの継続につながっています。こうした取り組みを通じて男女共同参画を進めていきたいと考えています。
現在、当教室においては、卒後10年の時点で8割の女性医師が教室に所属して活躍しています。皮膚科の全国平均(3割)に比較して極めて良い状況にはありますが、さらに魅力のある働きやすい職場にする努力を続けていきたいと考えています。
(2013年10月)