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一女性外科医の育児と勤務の両立の体験談

肝胆膵外科・人工臓器移植外科 大学院生
冲永裕子
 

 この度は、男女共同参画委員会よりエッセイ執筆の機会を頂き深く感謝申し上げます。
私は2005年卒業の9年目医師です。当院での初期・外科専修プログラムを修了し、大学院進学と同時に第2外科に入局しました。プライベートでは、2009年に長女、2013年に長男を出産。現在第3子を妊娠中ですが、臨床業務に携わりながら学位取得を目指して研究を遂行しています。

 当科は、元来女性医師の数が少なく、臨床においては24時間365日勤務することを常とする風潮があり、私のように育児中の女性医師の受け入れは前例がありませんでした。そのため、無理せず勤務を継続していくための体制づくりを医局と相談させて頂いてまいりました。臨床面では、時間外の対応についてサポート体制をチームメイトの先生方に組んで頂きました。円滑に対応いただけるよう担当患者情報を共有し、勤務時間中は積極的に臨床に参加することで、チームに貢献できるよう心掛けてきました。周りの先生方に負担をかける体制ですが、こうして頂けなければ、個人的に様々な託児サービスを利用してもこれまで継続して勤務することはできませんでした。

 日常面では、夫婦で協力して家事育児を分担しています。夫も消化器外科医ですが、私のキャリア形成に理解があり積極的に協力してくれます。子供との時間の確保のため、洗濯乾燥機や食器洗浄機など便利家電を活用する他、食品・日用品の宅配サービスの利用、時には家事代行サービスに掃除をお願いして家事にかける時間を軽減する工夫をしています。

 外科医にとっては、キャリア形成と同様に手術スキルの取得と向上も重要であり、女性の場合、修練期間と出産好適期が重なっていることが外科医を継続しにくい大きな要因の一つだろうと思います。各個人の才覚にもよりますが、手術手技の向上には座学だけではどうしようもない部分があります。私の場合も、修練期間に子供を持ったことで必然的に経験値は少なく、同期と比べて現時点でスキルが劣ることを自覚しております。ただ、20年、30年と長期的に外科医を続ける経過の中で、手術から離れる期間は今のごく一部でありますので、その点については割り切って、仕事・育児の両面において現在出来ることを精一杯励んでいこうと考えております。

 女性医師・共働き家庭が増える中、仕事と家庭の両立を目指した生活スタイルは女性だけでなく男性にも今後より求められるものかもしれません。後輩たちにとって一つの参考となれたら幸いです。

(2014年3月)

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