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医師として10年目を迎えて

皮膚科 助教
柴田彩

私は平成16年に卒業し、2年間の初期研修を終了後、皮膚科に入局しました。気づけば医師として今年で10年目、皮膚科に入局して8年目となり、周りには若い先生方が増えました。入局当初、5年後、10年後の具体的な将来像を描いていたわけではなく、継続して皮膚科の診療や研究をしたいと考えており、その過程で仕事と家庭のバランスに悩むこともありましたが、現在、こうして皮膚科医として働いていることにまずは感謝したいと思います。皮膚科入局後、大学院進学の希望は以前からありましたので、2年目で大学院に進学し、在学中に一つ目の仕事のめどがついたところで、子供を授かり、出産いたしました。卒後は助教として主に初診外来・専門外来・往診といった診療業務、研究、学生教育に携わっており、卒後2年目に第二子を出産し、産休後に復職、現在に至ります。

入局以来、縁あって皮膚科のなかでも「乾癬」を専門にし、診療および研究に携わってきました。当初は先輩の諸先生方の診療から習得する日々でしたが、週に1回の専門外来を持ち、自身でも診療経験を重ねることで、治療の幅を広げることができました。研究の分野においても専門である乾癬の研究を続けており、臨床にリンクした研究を続けられている環境に大変感謝しております。専門を決める時期やその必要性に関しては診療科によっても大きく異なりますが、私にとっては比較的早い段階で皮膚科の中での専門分野を決め、臨床、研究に携わることができたことは出産後に自分の働き方を考える段階で非常に大きな強みとなり、有利に働いたように思います。また、そのなかでメンターとなる先生に出会えたことは本当にラッキーでした。仕事面において御指導頂けたことはもちろん、家庭や育児とのバランスでなかなか思うように仕事が進められない時も、状況を御理解して頂くとともに、やはり何よりも気力を頂き、短い歩幅でも継続して一歩ずつ、明るく前向きに進むことの大切さを学びました。物理的な時間制約があるのが現状ですので、仕事の質を落とさぬよう、意識して働くことが大切だと考えております。

現在、皮膚科では子供がいる女性医師は主に外来・往診業務に携わり、当直のかわりに日直という形で対応して頂いております。また、出産後しばらくは復帰までのステップとして病院診療医として勤務し、その後に常勤復帰される先生方もいらっしゃいます。このようなシステムは今後、女性医師の割合が増えると当然、体制も変わってきますし、それなりに柔軟に対応できる心持ちは必要と考えますが、女性医師が継続して診療を続けられる体制が医局内にあることは大変ありがたいことだと痛感しております。家庭や子供を持ち、仕事を続ける女性医師にとって、そのバランスに悩まない人はいないと思います。出産後の働き方は個人の考え方のみならず、家族や周囲の理解も必要であり、正解はないのが現状です。私自身は産休後の常勤復帰を希望しましたが、復帰にあたり、まずは家族をはじめ、周囲の理解とサポートがあったからこそであり、大変感謝しております。また、現在、二人の子供は院内のいちょう保育園に通園しています。こうして安心して仕事に向き合えるのも、日中のほとんどを園で過ごす子供達に第二の家庭のような温かさで接して下さる先生方のおかげであり、大変感謝しております。ちょうど医師として10年目にこのような執筆の機会を頂きましたが、自戒の意味もこめて、次の10年を迎えたいと思う今日この頃です。

(2013年10月)

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